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視覚障害児の理解

一人一人に応じた適切な教育のためには、正確な実態把握が必要です。観察法、面接法、検査法などの手立てを用いて必要な情報を得ることが大切です。

弱視児の視力検査について

遠見視力

検査距離5メートルに置かれた字づまり視力表(ランドルト環視力表)で行います。 検査距離5メートルで視力0.1未満の視力を測るとき

  1. 検査者に0.1の視標が見える位置まで近づかせる。
  2. 0.1の視標が判別できたときの指標と被検者間距離(Xメートル)を求める。
  3. その時の視力値を求める。

0.1×(X分の5)
字ひとつ視力表(ランドルト環単独視標)を使うとさらに正確な視力が測定できます。

近見視力

検査距離30センチメートル用の近見視力表や、近距離単独視標で行います。
新聞を読むためには0.5程度の近見視力が必要といわれています。 

最大視認力

近距離単独視標を使い、最も見やすい距離で行います。どのくらい小さい視標が見えるか、またその距離も測定します。
これらの視力値をもとに、板書や掲示物、プリントの文字や図表などへの配慮について検討します。弱視レンズの選定にも参考にします。

視覚障害を伴う知的障害児の見え方の把握

視覚障害を伴う知的障害児に対する指導では、、指導上の配慮や教材・教具の準備に当たって、その子どもの見え方を把握しておくことは大事なことです。しかし、ランドルト環を使用した視力検査が難しい場合は、「視力測定不能」として扱われるケースも少なくないようです。「視力」のほかに、「視野」「明るさや暗さに対する反応」といった観点を加え、客観的に子どもの見え方の実態を把握しましょう。

知的障害児の場合、見えにくさを言葉で表現できないこともあります。そのような場合には、行動の特徴や個々の眼疾患の特性等から総合的に判断する必要があります。「面接法(聞き取り)」「行動観察法」「検査法」などの方法で情報を集め、それらの情報の意味を考えたり解釈したりして総合的に捉えることが大切です。また、眼科医の診察を受けて、目の状態を正確に診断してもらうことも必要なことです。

乳幼児がどのくらい見えているか知りたい

乳幼児の場合は、通常の視力検査ではなく、「森実ドットカード」や「テラーアキュイティーカード」による視力検査や日ごろの活動の様子を観察することでおおよその視力を知ることができます。子どもがどの程度の大きさを認識できるのか知る手がかりとなります。

弱視児に見られる行動とその背景

弱視児の見え方には一人一人大きな違いがあります。見え方の特徴を踏まえ、適切な配慮を行うことが大切です。 

弱視児は、以下に挙げたような様々な見えにくさから、見て真似ることが不得意です。しかし、ほとんどのことは、自分で経験して失敗しながらできるようになります。そのためには、一人一人の見え方を把握し、意図的に場面を設定して日常の指導に当たることが大切です。

本に顔をつけるようにして見る

網膜像を大きくすることで見やすい状態にしています。しかし、遠視を伴うような弱視児は、遠くも見えにくいし、ある距離以上目を接近させても見えにくくなります。

移動に時間がかかる

コントラストがはっきりしないため、足元の段差が分かりにくいためです。階段では特に下りが分かりにくいです。

初めての場所では、机や棚などにぶつかる

物がはっきり見えていないためです。または、視野欠損により見えていない部分がある場合があります。

外に出ると目を細める

羞明(まぶしさ)があります。

教室の後ろの方が見えやすい

視野が狭く、前の席では板書が分かりにくいためです。実際に様々な位置の席に座って、黒板に書かれた文字や図形を見せて、見やすい席を決めさせます。

顔を傾けて斜めの方向から見る

中心に暗点があるか、角膜の中央が濁っていると考えられます。「真っ直ぐ見て。」という言葉がけはやめましょう。 

弱視児の指導について

弱視児に見られる行動とその背景で挙げた見えにくさのため、弱視児には次のような学習上の困難が見られます。

  • 小さいものや細かい部分がよく分からない。
  • 大きいものの全体像を把握することが難しい。
  • 全体と部分との関係をとらえることが難しい。
  • 境界がはっきりつかめない。
  • 立体感・遠近感をつかみにくい。
  • 動くものの認知が難しい。
  • 何であるか分かるまでに時間がかかる。
  • 運動・動作の模倣が難しい。
  • ボディイメージの獲得が難しい。

弱視児の指導では、保有する視覚を最大限に活用することが重要です。そのためには、子どもにとって見やすい条件を整え、子ども自身の「見る力」を引き出し高めていくことが必要になります。

子どもにとって見やすい条件を整える主な手立てには、次のようなことがあります。

拡大

  • 文字や絵を見やすい大きさに手書きする。
  • パソコンにより一番見やすい字体とポイントで作成する。
  • 拡大コピーする。
  • 弱視レンズや拡大読書器を活用する。   

縮小

大きなものの全体像が視野内に入るようにする。 

図と地のコントラストの増強や色彩への配慮

  • 境界や輪郭をはっきりさせる。
  • 注意してほしい情報を強調して色分けしたり、太い線を用いて表す。 

単純化とノイズの除去(特に地図など)

余分な視覚情報は排除し、見せたいところだけを強調する。 

明るさへの配慮

  • 全体照明だけでなく、蛍光灯スタンド等を有効に活用する。
  • 教室には、ブラインドやカーテンを備え付ける。
  • 外に出るときには帽子やサンバイザーで日差しをよける。 

適切な学用品の選定(できるだけ見やすく使いやすいもの)

  • ノートの罫線を見えやすい太線で強調する。
  • 手作り教材で工夫する。

文字の読み、書きの指導での配慮について詳しく知りたい

教師が読み書きの指導を行う上での配慮には、次のようなものが挙げられます。

読みの指導

  • フラッシュカードなどを使って文字の認知力を高める。
  • 文脈を理解しながら読みやすいように、新出漢字の指導や、文章中のキーワードの説明を行う。
  • 一定の早さで読めるように練習させる。
  • 自分の視力に見合った視覚補助具を使うように促す。

書きの指導

  • 自由に書かせ、書き慣れる経験を積ませる。
  • 文字の形を整えて書くような手立てを示す。
  • 文字の大きさや中心線をそろえて書くような手立てを示す。
  • 文章を書き写す際は、一文字ずつよく見るようにさせる。

教室環境整備の例について詳しく知りたい

教室では、座席の位置、照明の状態、掲示や板書について配慮が必要です。

座席は、一般に前列の中央が見やすいようですが、羞明や視野狭窄の有無、拡大読書器や書見台の使用状況によって窓側や廊下側も考えられます。カーテンや机上灯を使用して採光にも気をつけます。

板書に際しては、チョークの色は、白、黄色が見えやすく、赤、青などは見えにくいという弱視児が多いので、実際に書いたものを見せて確かめると分かりやすいようです。また、黒板および黒板消しをきれいにしておくと、文字がはっきりして見えやすくなります。そして、板書をする前にこれから書く内容を話してから板書したり、板書した内容を復唱したりすることが大切です。

掲示物(教室の表示、作品等)も見やすい大きさや高さに調節します。

弱視児の外界認知の段階について詳しく知りたい

弱視児が外界を認知する能力には、次のような3つの段階があると考えられています。

見えても見えずの段階

例えば、視力が0.1あるのでこの程度のものは見えてもしかるべきだと思われるのに、見えない、また見ようとする意欲が感じられないといった状態。

見る能力相応に見える段階

視力相応に見ることができる状態。

見えないものまで見ることができる段階

明確に見えなくとも、今までの経験や体験に基づいて、こうであるに違いないという確かな予測を働かせることができる能力(応用的視覚認知)がある状態。

弱視教育は見えないものまで見ることができる段階を目指すことが必要です。

そのために、保有視覚を最大限に活用できる力を育てるには、

  • 見ることの楽しさを味わい、見ようとする意欲を高めること
  • 系統的・継続的な指導を通して視覚的認知能力の向上を図ること
  • 必要に応じて視覚補助具を活用できる力を養うこと

などが大切です。視力はものをはっきり見ることをとおして発達します。「何となく見える」という状況から「意識的に対象を見る」力を育てることが大切です。そのためには、認知しやすい色調や、好きなキャラクターといった興味を引くものを手がかりにすることも有効です。

盲児に見られる特徴とその背景

人間は外界の情報の80パーセント以上を視覚から得ていると言われています。盲児の場合、視覚情報がほとんど得られないため、生活や学習において様々な困難が生じます。その主な例として次のようなことがあります。

  • 周囲の環境を把握することが難しいため、行動が制限され経験が乏しくなる。
  • 視覚情報が得られないため、概念の形成や知識の習得に制約を受ける。
  • 視覚的な模倣ができないため、動作や技術の習得に難しさが生じる。

このような困難があるため、適切な環境と指導が必要になります。

盲児に見られる特徴を詳しく知りたい

盲児に見られやすい特徴には次のようなものがあります。

  • 触って確かめることに消極的である。
  • 自分の目を押したり、頭を振ったり、身体をぐるぐる回すというような行動(ブラインディズム)をする場合がある。
  • 抽象的なことばの理解は人から聞いたり会話を通して晴眼児と同等かそれ以上であるが、適切な観念やイメージが伴わず言語のみの理解(バーバリズム)になってしまう。
  • 周囲の様子を的確に把握するのが難しい。
  • 歩行などの行動に大きな制約を受ける。
  • 視覚による模倣動作ができない。
  • 図や絵などが理解しにくい。

盲児の指導上の主な配慮

盲児に見られる特徴とその背景のような困難を改善・克服するためには、どうすればよいでしょうか。
教師が配慮すべきことには、次のようなものがあります。

  • 周囲の環境や周りの人の活動状況について、簡潔で分かりやすい言葉を用い、具体的に説明する。
  • 視覚情報は、聴覚情報(活字から音声)や触覚情報(活字から点字・実物)に置き換えて提示する(ビデオ教材や立体模型を使用する)。
  • 言葉の学習では、言葉の内容と、具体的な事物・事象との結び付きをしっかり図る。
  • 安心して行動できる安全な環境を整備する。
  • 動作を伴う学習では、言葉による説明のほかに、生徒の手を取って示したり、教師の動作に触れさせて説明する。(アクションの前の予告が大切)
  • クロックポジションを使って位置を知らせることも有効。

 注:クロックポジションとは、方向を時計に例えるもので、正面を12時、右を3時、真後ろを6時、左を9時とします。食事の時は、正面手前が6時です。「1時の方向に電柱があります」などと使います。

盲児の視覚以外の保有感覚を活用して状況を把握する力を高めることが重要です。なかでも、触覚に関しては、幼少期から日常生活や遊びの中で手を使う経験を十分積むことが大切です。視覚障害教育ならではの指導上のポイントがありますが、それらは、「どのように見えないのか」「どのように見えるのか」といった、児童生徒によって使い分けていく必要があります。

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