令和6年度 クローバー4号
新たな一歩を あいサポート教室の様子から
病気などの様々な理由から、「見えない・見えにくい」状態となった成人の方の相談が、 今年度も多く寄せられています。個々のお話を伺う中で、生活する上で、これまでと同じ方法ではうまくいかなくなったことに対して、白杖や視覚支援機器の使い方をはじめ、 日常生活での工夫の仕方など、具体的な情報提供を行っています。 本校では、相談者一人一人のニーズに応えられるよう、定期的・継続的な相談の場として、成人の方を対象とした「あいサポート教室」を設けており、今年度は、歩行講座、パソコン講座、調理講座を開講しています。今号では、受講者の生活の質の向上に向けて取り組んでいる、現在の講座の様子を紹介します。
歩行講座
外出時に安全に移動できるよう、 白杖を使った歩行をはじめ、同行 者との歩き方やエレベーターの乗り降りの仕方など、 実際の生活場面に合わせた練習を行っています。受講者の方からは、「白杖を持つと周りの人のためにもなる」といった気付きの言葉もありました。
パソコン講座
生活上の様々な情報を得るためには、パソコンやスマートフォンの活用が大きな助けになります。音声での読み上げ機能や、見やすい画面の設定の仕方、「SeeingAI」や「radiko」などのアプリを紹介し、実際に機器を操作しながら学んでいます。
調理講座
計量の仕方や物の置き方などを工夫することで、より安全でスムーズに調理することが可能になります。基本的な調理動作の工夫から、火を使わない電子レンジレシピまで、受講者の生活スタイルに合わせた調理のポイントをお伝えしています。
全国で唯一の設置高等部専攻科「生活情報化」の紹介
本校高等部専攻科には、理療師(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師)を養成する理療科のほかに、「生活情報科」を設置しています。
生活情報科は、教育的リハビリテーション支援を行う学科で、全国の盲学校・視覚支援学校の中で、現在、本校だけに設置されています。
設置目的
中途視覚障害者等の成人の方に対して、日常生活及び社会生活自立に向けて、生活技術の習得等をねらいとした実践的な学習を行う。
学習期間
1年間(週当たりの登校日数や時間については、相談に応じています。)
学習内容
- 歩行・移動に関する学習安全な屋内歩行、白杖を使用した屋外歩行、公共交通機関の利用等
- 情報・コミュニケーションに関する学習音声パソコンの基礎、拡大読書器の操作、点字の基礎等
- 日常生活動作に関する学習家庭生活の基礎的な動作の習得、視覚に配慮した生活用具の活用等
- 社会参加・余暇等に関する学習福祉制度の理解と活用、視覚障害者スポーツ、美術・創作活動等
注:一人一人見え方が違うように、困っていることもそれぞれ違います。上記の4つの内容を基本としながら、面談を通して、ご本人やご家族と一緒にニーズに合わせた学習内容を計画しています。
指導体制
学級・学部の担当職員が、本校職員である歩行指導員や視能 訓練士等と連携して指導・支援を行う。現役生と修了生の声 「生活情報科は自分に必要なことが学べるところ」
(文責:武田 幸美)
現役生と修了生の声 生活情報科は自分に必要なことが学べるところ
現在、生活情報科に在籍している30代のAさん(男性)
入学のきっかけ
見えなくなって3~4年経った頃、通っていた眼科の看護師さんから、この学校を紹介されました。
特に役立った学習内容
白杖での歩行です。自宅からコンビニくらいには1人で行けるようになりました。12月からは、JRを利用して帰省しています。パソコンも、マウスなしである程度使えるようになり、情報収集に役立っています。
今後の予定と一言
2月末の入試に合格できれば、本校の理療科に進学し、国家資格取得を目指す予定です。この学校に来て、できるようになったことが増えました。生活情報科は自分に必要なことが学べるところなので、来て損はありません!
役に立った学習は、まず歩行。往復2キロメートルのコースを1人で散歩しています
50代で入学したBさん(男性)
入学のきっかけ
病気で倒れ、その影響で全盲になりました。最初の病院からリハビリテーションセンターに移り、相談員の方から視覚支援学校のことを聞きました。東京の病院に行くために手引き歩行を習いに来校し、その後、日常生活の技術を身に付けるため「あいサポート教室」に通う中で生活情報科のことを聞き、入学を決意しました。
特に役立った学習内容
まず、歩行。そして、情報機器の使い方です。パソコンは毎日使っていますし、iPhoneはなくてはならないコミュニケーションツールです。入学したのがコロナ禍で、行事等が中止、縮小された時期でした。そんな中でも、秋盲祭は、準備も含めて楽しかったですね。
現在の生活
在宅でゆっくり過ごしています。猛暑や熊問題で少し自粛もしましたが、往復2キロメートルのコースを1人で散歩しています。また、友人と飲みに行ったり、妻と映画館に行ったりしています。2週間ぐらい遅れますが、多くの作品の音声ガイド(UDキャスト、ハロームービーなど)が配信されるので、片耳にイヤホンをして最新の映画を楽しめるんですよ。学校から行事の案内も楽しみです。卒業後もあいサポート教室の合同講座に参加して、作ったフラワーアレンジメントの写真を、毎年年賀状に使っています!
ゼロから教わったパソコンが、今の理療科での学習につながっています
50代で入学し、現在本校理療科に在籍するCさん(女性)
入学のきっかけ
ずっと見えにくさがあったのですが、専業主婦になっていたので、眼科で視覚支援学校を紹介されても気にしていませんでした。子どもに手がかからなくなったのと、前よりも見えにくくなってきたこともあり、視覚障害者の生活をネットで見ていると、視覚支援学校のことが出てきて、どんなものだろうと、学校に電話をしました。でも、電話するまでには、しばらくかかりました。
特に役立った学習内容
パソコンは全然やったことがなかったので、ゼロから教わり、それが現在の学習につながっています。スマホも使っていたのですが、より便利な使い方を教わりました。「音声で聞く本」との出会いもありましたね!
現在の生活と一言
あん摩マッサージ指圧師の国家資格の取得に向けて頑張っています。結婚前に働いていたときも、視覚障害者の職業といえば理療だろうと思ってはいました。でも、どうやったらなれるのか分からなかったんです。もし、どうしていいか分からず悩んでいる人がいたら、視覚支援学校に連絡してほしいです。とりあえず「一歩」踏み出すことから始めてほしいと思います。
(文責:京屋 敦、佐藤 桂)
お問合せ
お問合せは秋田県立視覚支援学校ロービジョン支援センターへ
相談支援担当
近江 龍静(教頭)、銭谷 寿、佐藤 加奈子
〒010-1409 秋田県秋田市南ケ丘一丁目1番1号
電話番号:018-889-8571
ファクス:018-889-8575
Eメール: shikaku-s@akita-pref.ed.jp