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令和7年度 クローバー2号

理療科紹介 「見えにくさの先に(理療)」

「ほかに選択肢がなかったから」「資格が取れると聞いたから-」

理療科に入学する生徒の出発点は、必ずしも夢や希望に満ちたものばかりではありません。視覚に障害があることで、自分に何ができるのか分からず、「とりあえず進んでみよう」と一歩を踏み出す生徒が多いのが実情です。「理療」という言葉自体に、特別な意味や明確なイメージを持たずに入学してくる生徒も少なくありません。それでも、学びが進むにつれて、心の中に漠然とした思いが芽生え始めます。

「人の役に立てたらいいな」「社会貢献ってかっこいいな」「自分のペースで働けたらいいかも」といった、少し現実離れした将来像を思い描く生徒もいます。とはいえ、思っていた以上に厳しい現実に、次第に気付いていくことになります。技術の習得には粘り強さが求められますし、国家試験のハードルは高く、真剣に取り組まなければ合格は難しいのが現実です。

また、「いつかは自分の施術所を…」と夢見ても、開業には制度の理解や経営的な視点が欠かせません。さらに、「他者の役に立つ」ということの重みを実感し、それには相応の覚悟が必要だということも、徐々に理解していくのです。

そのような過程を経て、多くの生徒が「何のために、誰のために、どう働いていくのか」といった、これまで曖昧だった問いと向き合うようになります。

理療科での学びは、単に技術を身に付けるための場ではありません。それは、「見えにくさ」と向き合いながら、自分自身の人生を見つめ直す時間でもあります。現実と向き合いながら、自分なりの答えを探していく――そんな学びの積み重ねこそが、理療科の大きな特長です。

同じ障害がある教員がいるということも、理療科ならではの重要な要素の一つです。似た境遇の先輩たちの姿に触れることで、自分の将来を重ねて想像した瞬間もあったことでしょう。戸惑い、悩み、試行錯誤を繰り返しながらも、3年間という限られた時間の中で、自分なりの意味を見出していく。私たちは、そんな生徒たちの姿に、何度も立ち会ってきました。

こうして、それぞれの生徒が自分なりの歩みを重ね、やがて理療という仕事に向かっていきます。夢や理想だけでは語れない現実のなかで、模索を続ける。その姿こそが、理療科の日常なのです。 

(文責:理療科主任 望月 秀樹)

「見やすさ」・「捉えやすさ」で変わる子どもの学び

私たちは、視覚から8割以上の情報を得ていると言われています。その視覚に障害が生じた場合、生活する上で必要な情報が保障されるよう、さまざまな工夫が必要です。これは、視覚障害のある当事者だけでなく、視覚障害のない人たちにとっても「合理的配慮」として求められるものです。

今回は、視覚障害のある児童生徒への配慮であると同時に、生活や学習の場面において誰にとっても役立つ「見やすさ」や「捉えやすさ」の工夫について紹介します。

【教材作りでの文字、配色とコントラスト】

(1)パソコンの書体

文字を学習中の児童に対しては、文字の大きさだけでなく、書体も特に気を配るポイントです。ワークシート等を作成する際は、UDデジタル教科書体使用が推奨されています。学習指導要領に準拠した字形で、一定の太さを保ちながらも、書き方の方向や始筆、終筆など運筆が分かりやすくなっています。余分な装飾がないなど、弱視児だけでなく読み書きに障害のある子どもにも配慮されています。
UDデジタル教科書体には、末尾の異なる6種類があります。標準の「R」、タイトル等に適した太字の「B」など用途に応じて使い分けると良いでしょう。

一般に使われている書体の中には、学習指導要領の字形と異なるもの、細くて見づらいもの、太すぎて潰れてしまうものなどがあります。

(2)イラスト

教材としてイラスト等を使用する際には、配色や形がはっきりしたものを選びます。輪郭が曖昧で淡い同系色が重なっているようなものは、対象物を捉えにくくしてしまいます。写真の使用では特に注意を要します。

例)絵本 「おべんとうバスのかくれんぼ」 真珠まりこ/著・ひさかたチャイルド/刊

  • 配色や形がはっきりしている。

例)川の中に魚は何匹いますか?(イラスト)

  • ぼんやりして魚が分かりづらい。→魚や川幅をペンで縁取ることで、認識しやすくなる。

【手書きと光の反射への配慮】

(3)ホワイトボード

ホワイトボードは光が反射して見えにくくなることがあるため、常用する際にはカードや掲示物を活用し、ペンの太さや先端の形状、インクの量などに注意を払う必要があります。カードを作成する際にラミネートを使用する場合は、光沢のないタイプを選ぶと、より見やすくなります。

ホワイトボードでのマーカーの選び方・使い方

  • 線の太さやインクの色が適切である。

見づらい場合

  • 線の太さが違い、誤認しやすい。
  • 線が細い。
  • インクの色が薄く、かすれている。

ラミネートの例

  • 光沢のないタイプ~見やすい。
  • 通常のラミネート~光の反射があり、見づらい。

このように、「見やすさ」や「捉えやすさ」の意識をもつことで、学びの効率化や概念形成、物事の理解が進むことにつながります。このような視点は、校種を問わず、指導・支援する側のスタンダードにしていきたいものです。

(文責:武田幸美)

お問い合わせ

秋田県立視覚支援学校 ロービジョン支援センターへご連絡ください。
相談支援担当:近江龍静(おおみ りゅうせい)教頭、銭谷 寿(ぜにや ひとし)、佐藤 加奈子(さとう かなこ)、武田 幸美(たけだ ゆきみ)、藤田 由樹(ふじた ゆき)
住所:010-1409 秋田県秋田市南ケ丘一丁目1番1号
電話:018-889-8571
ファクス:018-889-8575

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