卒業生インタビュー3(3回目)
(2023年 初掲載)
秋田県立視覚支援学校オリジナルキャラクターのチューモくんです。「チューモくん日記」では、本校やその周辺のことについて語っていきます。
今回は、平成27年度に本校高等部専攻科理療科を卒業した吉田有沙さんが、中学部3年生の進路学習で話した内容を再構成したものの4回中の3回目です。
チューモくん:では、日常の生活の話を伺っていきましょうか。まずは、今、白杖を使っていますが、白杖を持つようになったきっかけから話してもらえますか。高等部普通科3年から編入ということは、途中まで見えていたと思うので、最初は、抵抗があったのではないですか?
吉田:最初は、まだ「見えている」という気持ちもあったので、持とうとは思わなかったのですが、盲学校に転校したのを機会に、気持ちを切り替えて持つようになりました。駅からスクールバスに乗って通っていたのですが、周りの人も使っていたので、そこからは、あまり気にならなくなりました。
チューモくん:さて、現在は一人暮らしです。人が多い都会の街を一人で移動するのは大変ではないですか?
吉田:人が多いと、助けてくれる人も多いので、秋田よりも歩きやすいですよ。電車に乗っていると、「ここ空いてますよ」って、席を譲ってくれる人もたくさんいます。視覚障害者にもいろいろな人がいて、「私は、目が悪いだけで足が悪いわけじゃない」と断る人もいるのですが、私は、相手の人が次の機会に「この人にはもう譲りたくない」と思われないような返事を心掛けています。
例えば、次の駅で降りるようなタイミングで声を掛けられたら、「ありがとうございます。でも、次で降りるのでいいですよ」と言って、立ち上がった相手の人が、また座り直すのに気まずくないようにするし、疲れていて座りたいなぁと思っているときは、素直に「ありがとう」って座らせてもらっています。
チューモくん:そういう心遣いは大切ですよね。
吉田:そうですね。あと、道に迷ったときなんだけど、自分の力で何とかしようと思うか、他人に助けてもらうかという選択肢がありますよね。
自分で何とかしようとして、頑張って、どうにもならなくなってから助けを求めても、大変なことになっていることが多いんですよ。だから、困ったら、早めに助けを求めた方がいいです。さっきも言いましたけど、助けてくれる人は、都会の方がたくさんいますから。
白杖を持って歩いていると、食事の時なんか、店員さんが、「3時のところにお水を置きますね」なんて言ってくれて、「おー、時計で説明することを知ってるんだ」なんて感激します。
チューモくん:クロックポジションを知っているんですね。
吉田:ドラマになった「ヤンキー君と白杖ガール」の影響が大きいですね。あれ以降、結構分かってもらえる場面が増えました。私が街を歩いていると、「白杖ガールだ」っていう声が聞こえてくることもあって、「もう、ガールじゃないよ」って思ったり(笑)
そうそう、助けてくれるって言えば、特に駅員さんは、介助が上手ですよ。乗車駅で、どこまで行くって言うと、降りる駅の駅員さんが駅を出るところまで介助してくれたりします。「9時の方向に曲がります」とか、ここでも時計(の文字盤の表現)で教えてくれることが多いです。
チューモくん:電車で出かける際に、準備したり工夫したりしていることはありますか?
吉田:初めて行くところは、スマホで、行きたい場所がどの駅からどれくらいかかるかとかは調べていきます。駅員さんに、「ここに行きたいんですけど、どう行けばいいんでしょうね?」って聞くと、駅員さんは駅構内から出ることはできないので、駅の出口で、「こっちの方向へ進んで、どれくらいで」って教えてくれます。
行き先が近いと、口で説明するより早いのか、本当はルール違反なんでしょうけど、その場所まで介助してくれる駅員さんもいて、ありがたく思ってます。
街中で声を掛けられたときの対応の仕方、困ったときの助けの求め方など、吉田さんなりに考えながら生活しているのだなということが分かりました。
気持ちよく生活していくためには、「自分一人で生きているわけではない」という感覚が必要なのだなと、改めて感じました。
(2025年9月25日 再掲載)