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110周年・もの ~盲児用昆虫図鑑~

(2022年 初掲載)

秋田県立視覚支援学校オリジナルキャラクターのチューモくんです。
「チューモくん日記」では、本校やその周辺のことについて語っていきます。

秋田県立視覚支援学校は、令和4年度で創立110周年。
今回は、本校図書室に収蔵されている「盲児用昆虫図鑑」を紹介します。

本校図書室には、1965年に発行された「盲児用昆虫図鑑」が3冊あります。
3冊とも、内容は同じものです。
中身は、触って分かるように樹脂インクにより印刷された昆虫の絵と点字で構成されたページと、亜鉛版製版による点字のページで構成されています。昆虫の輪郭は点で囲まれていますが、脚や触覚などは樹脂インクで面的に描かれています。
図版が掲載されている昆虫は約60種類です。

京都府立盲学校小学部主事(当時)の谷口孫一氏による「はしがき」によると、この本を作ることを思いつき、細かな図版の原盤を作ったのは、京都の友禅染の図案化として活躍していた岡本勇三氏だそうです。友禅染の技術を点画に応用できないものかと8年も研究を重ね、生物学専攻の太田修教諭と打合せをし、作っていきました。太田教諭は、点字版の教科書にある図版が、活字版の教科書の30分の1以下であることに不満を覚えていました。

こうして作られた図鑑には、学習に使うためのいくつかの工夫がされています。
例えば、図版には色が付けられています。これは、盲児だけでなく、弱視の児童生徒も学習に使えるようにです。
また、図の横または下に1本の線が記してあります。これは、その昆虫の実際の体長を表しています。

さて、本校にある3冊の奥付を見ると、次のようになっていました。

盲児用昆虫図鑑(非売品)
総監修 鳥井 篤次郎
監修 谷口 孫一
編集 桜庭 修
点訳 印刷 杉本 久一
作画責任者 岡本 勇三
(京都市中京区三条通坊城北入西側)
寄贈者 住所 芳名

寄贈者については3冊とも手書きで書かれていましたが、それぞれ異なっています。
2冊は、「京都友の会」と書かれていました。内1冊は、おそらくその点訳団体の中のグループであろう「南方面」と書かれており、もう1冊は「衣笠もより」と個人名が書かれています。残る1冊は、東京都の方で、「成瀬冨美子 さと子」と書かれています。
各地の様々な方が、この図鑑を盲学校に寄贈するために金銭的な援助をしてくださったのだと思います。

多くの人の思いと善意で全国の盲学校に寄贈された図鑑です。大事に有功に使っていきたいですね。

<参考資料>

  • 「『盲児用昆虫図鑑』試作メモ」太田修、「日本の点字 第22号」、日本点字委員会、1997年

(2025年7月8日 再掲載)

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