小・中・高等部普通科 社会 「地図を用いた指導の留意点」
視覚に障害のある児童生徒に対して、地図を用いた指導を行う際のポイントについて、本校の取組を中心にまとめました。
1 点字使用者の場合
(1) 教科用図書の地図として、『点字版基本地図帳』(視覚障害者支援総合センター)があります。この地図帳は中学生を対象としていますが、触察の力が育っている場合、小学生でも使用ができます。本校では、小学部中学年以上で教科書(一般図書)の採択希望に含めています。
(2) 立体・半立体の教材として、公文のパズル(点字付きもあり)や、全国の盲・視覚支援学校に寄贈された立体地球儀(非販売品)などがあります。特に立体地球儀は、幅広い学年の様々な学習場面で活用されています。また本校では、木材やスタイロフォーム、スチレンボードなどを用いて、用途に合わせて分かりやすい大きさで立体の地図を作っています。
(3) 点図作成ソフト「EDEL」を使って点字地図を作成することができます。3種類の点を使い、点と点の間隔を変えて表現します。
(4) 白黒の図と立体コピー機を用いて、簡易な触察地図を作ることができます。特性上、細かく明瞭な表現は難しいですが、内容を単純化して示す際に役立ちます。
(5) 触察の際に指導者は、児童生徒の手の動きに合わせて、読み取りの方向を示したり解説したりします。全体を触ってから細部を触ることを基本とし、両者の関係性が分かるように指導します。
2 弱視者の場合
弱視者の見え方は一人一人違いますが、地図を利用する際の共通の問題として、「文字が小さい上に紙面上の情報量が非常に多いため、目的の情報になかなかたどり着けない」ことが挙げられます。そこで、次のような工夫を行っています。
(1) 見やすい市販の地図の利用
『みんなの地図帳~見やすい・使いやすい~初訂版』(帝国書院)
この地図帳は、上記の『点字版基本地図』を基に、盲・視覚支援学校の社会科教員が集まって検討し編集したものです。国名や都道府県名と代表的な市のページ、自然のページがあり、情報の精選と図のデフォルメや配色の工夫などにより、シンプルで見やすく使いやすい地図帳になっています。
なお、その他の拡大地図帳が東京書籍、帝国書院から発行されています。
(2) 地図の作成と指導のポイント
1、 情報を精選し一枚の地図に詰め込まないようにし、複雑になりそうなときは、複数の地図に分けるようにします。また、ベースとなる白地図に国境・県境、自然環境、都市、各種分布等の情報を記載した透明シートを重ねて示す方法もあります(以前学校で使用したOHPのイメージです)。
(写真 基本の白地図に国境線を重ねた地図)
(写真 大西洋中心の地図)
(写真 秋田県の市町村のパズル)
2、 文字を入れるスペースがなかったり、文字と示したい位置が離れたりする場合は、地 図上の地点に番号を振り、文字情報は別記にします。学習の中で、児童生徒自身に書かせてもよいでしょう。
3 、色の使用は、児童生徒にとって区別しにくい場合や、まぶしく感じることもあるので、個別に配慮します。色のコントラストを明瞭にし、境目を縁取るなどの工夫をします。
4 、部分を拡大するほど、全体との関係が分かりにくくなります。全体のどの部分に当たるのかを随時確認します。
5 、弱視の児童生徒であっても、立体・半立体の地図などを使って触って確かめることで、理解が深まることがあります。
6 、位置や形といった知り得た事柄を児童生徒が言語化し、それに対して教師がフィードバックをすることで、知識を確かなものにしていくことができます。