ここがポイント教科指導 音楽科編
視覚障害のある児童生徒にとって、音楽は得意分野になり得る教科の一つです。音や音楽は、視覚を補う重要な情報源であると同時に、音への鋭い感性と豊かな感情と想像力を育みます。そこで、指のポイントとして、Ⅰ楽譜等の視覚情報の理解、Ⅱ曲想や心情のイメージ化と言語化、Ⅲ自立活動(「身体の動き」「環境の把握」等)との関連について整理しました。
Ⅰ 楽譜等の視覚情報の理解 →見やすさ、触りやすさ
(1)鍵盤ハーモニカの図譜
色分けした階名の丸いカードを、裸眼O.03で見ながら演奏できる大きさ(直径8センチ)で作成し、▲印と組み合わせた図譜にして提示しました。▲印は1拍分を表し、その部分は吹いた音を鳴らし続けることを意味します。
(写真1 鍵盤ハーモニカの図譜)
(写真2 図譜を見ながら鍵盤ハーモニカを演奏する生徒)
(2)リコーダーの図譜
伸ばす拍数を立体シールで示し、階名唱しながら旋律を触って覚えるようにしました。また、
スモールステップで練習できるように4小節(1段)ずつカードにして提示しました。暗譜
で演奏する際に効果的です。
(写真3 伸ばす拍数を立体シールで示した図譜)
(写真4 小節ごとの図譜カード)
(写真5 小節ごとのカードを確認する生徒)
(3)オーケストラの配置図
全盲生徒とオーケストラの編成について学習する際に、弦楽器や木管・金管楽器等の各楽器
群の配置を触図で示したものです。感触の違う素材(フェルト、不織布、セロハン、滑り止め
マット等)を立体コピーの半円形の配置図に貼り付け、楽器の種類を表しました。
(写真6 オーケストラの配置を示した触図)
(写真7 配置図に貼った素材と楽器の点字対応表)
Ⅱ 曲想や心情のイメージ化と言語化 →身体表現、観察、曲の感じを表す言葉のツール
(1)振り付けや状況の再現
歌詞に出てくる物の特徴を身振りで表しながら歌ったり、「遠くで手を振る」や「肩を寄せ合
う」等の歌詞の状況を実際に再現したりすることで、楽曲に対する思いや意図をもつきっかけ
を作ります。
(写真8 童謡『まっかな秋』の彼岸花の身振り)
(写真9 童謡『まっかな秋』に出てくるカラスウリの観察)
(2)曲を聴いて感じたことを伝え合う場面の設定
生徒から出た言葉を用いて「曲の感じを表す言葉の一覧」をホワイトボードとマグネットで
作成し、弱視と全盲の生徒が即時にイメージを共有できるようにしました。生徒同士
が自分のイメージに近い場所を同時に指差して一つのツールを共有することで、自分の思いや
意図の根拠を自由な雰囲気で伝え合い、相互理解につながりました。
(写真10 曲の感じを表す言葉の一覧)
(写真11 曲のイメージを伝え合う生徒たち)
Ⅲ 自立活動との関連 →目印の工夫、楽器の改良、定位置の音環境
(1)楽器の操作
木琴や鉄琴は鍵盤の境目が分かりにくく、慣れるまでは鍵盤をねらって打てるように目印を
工夫しました。鍵盤と対照的な配色の細長の画用紙を立体的に貼り付けるなどしました。また、
両手での操作を促すため、ボンゴにタンブリンを取り付けて左右の音色に違いを出したことで、
様々な手(腕)の動きとリズムパターンの学習に役立っています。
(写真12 鍵盤に細長の画用紙を立体的に貼り付けたシロホン)
(写真13 タンブリンを取り付けたボンゴ)
(2)気持ちの切り替えと自主的な移動
教室の出入り口からピアノまでのルートに決まった楽器を並べ、教師が出す音色の方向に進むことによって、そこで実際に楽器を鳴らし、楽しんで学習のスタート地点に向かうことができました。
(写真14 移動ルートに沿って楽器を配置した音楽室)