目の話 ピンホール効果
(2024年 初掲載)
秋田県立視覚支援学校オリジナルキャラクターのチューモくんです。
このシリーズでは、視機能に関連する話題を取り上げていきます。
今回は、ピンホール効果についてです。
先日、サンスター文具の「メガミエ」という定規を見つけて買ってみました。
「目に当てて覗くだけ! ピントがあう不思議な定規」と書かれています。
ルーラーの下の、黒い部分に、小さな穴がたくさん空いています。
裏面の商品解説には、「ピンホール原理でハッキリ見える」と書かれてます。通常は、大きい方の穴を覗き、明るい場所では小さい方の穴を覗くとも書かれていました。
小さな穴を覗くと、目に入ってくる光の量が少なくなります。
光の量が少なくなると、「焦点深度」が変わって、ピントが合う範囲が広くなります。
ピントが合う範囲が広いということは、普通に見えている状態よりも、遠くまで、あるいは近くまでピントが合うということになります。これを「ピンホール効果」といいます。
カメラに詳しい人なら、「被写界深度が深い」という表現を思い浮かべるかもしれません。アイリスを絞ると、レンズから入ってくる光の量が減って、ピントが合う範囲が広くなることを言いますが、同じ原理です。
眼科で視力検査をするときに、「目を細めないで見てくださいね」と言われたことはないでしょうか。
目を細めると、上下のまぶたの幅が狭くなります。瞳孔の大きさよりも狭くなると、目の中に入ってくる光の量が減りますので、ピンホール効果と同じように焦点深度が深くなり、本来の視力よりも良い数値が出ることになります。それでは、正しい治療を受けることができなくなりますので、「目を細めないで見てくださいね」と注意されるのです。
さて、このピンホール効果は、前述のようなグッズを購入しなくても簡単に体験できます。
使用済みのプリペイドカード(クオカードや、最近はあまり見かけませんが、図書カードやテレホンカードなど)に空いた小さな穴を使います。
この穴を覗きながら、本などを見ると、とても近いところまでピントが合います。
穴を覗いて、はっきり文字が見える最も近いところでカードを外すと、どうやってもピントが合わず、文字は読めません。目に入る光の量が減ることで、ピントが合う範囲が変わることに気付くことができます。
今回の話題は、弱視の方の見え方の改善ということではなく、一般的な目の機能に関する説明でした。
ピンホールを使えば、レンズを使わなくても、ものを目に近付けて大きく見ることができますが、光の量が少ないということは暗いということで、さらに視野も狭くなりますから、必ずしも見やすい状態ではありません。体験する際は、その点を理解していただいた上で行ってください。
(2025年11月17日 再掲載)