弱視職員へのインタビュー2(5回目)
(2023年 初掲載)
秋田県立視覚支援学校オリジナルキャラクターのチューモくんです。
2023年8月5日に、本校を会場に実施したサマースクールの保護者学習会で、本校の弱視職員のニムラさん(仮名)に、自身の経験や普段の生活を基に、生活する上での工夫点・配慮点について話してもらいました。
その内容を、インタビュー形式で紹介します。5回中の5回目です。
チューモくん:今回は、進路選択と今現在の話を伺いたいと思います。ニムラさんは、最初から理療の道を志したのですか?
ニムラ:実は、進路選択の時、両親と考えが合わなかったのです。
私が小さい頃、筑波大学へ進学した先輩がいたこともあり、両親の希望は、私が大学進学するか、理療科へ進学するかの2択でした。
本当は、自分は、理療の道ではなく、普通職に就きたかったのです。
でも、前にお話したとおり、小学部1年生からずっと寄宿舎生活をしていたこともあって、両親とは距離を感じていました。
チューモくん:そういう思いは、担任の先生などに相談しましたか。
ニムラ:学校の先生にも進路については相談しませんでした。一人で抱え込んでしまい、心を開いて相談できませんでした。
だからといって、自分で情報収集することも十分にできませんでした。自分でも努力をしていなかったなと思います。
チューモくん:どうしたらよかったんでしょうね。
ニムラ:私はもうやり直せませんが、今はインターネットも普及し、自分で自由に何でも検索できるようになってきた時代です。やりたいことがあったら、調べて道を切り開いていけばよいと思います。それには、自分の調べたいことは何かを整理し、何を使って、どのように検索するのか、その方法についても考えていく必要があると思います。
チューモくん:ニムラさん自身は、今、理療の仕事をしていてどう思っていますか?
ニムラ:理療科を卒業後、地元の医院、先輩の治療院、訪問マッサージ、自営(治療院)を経験しました。
仕事をする中で、自分が必要とされた時、感謝の言葉をもらった時に、理療師になって良かったと思いました。そういうときにやりがいを感じるようになりました。
チューモくん:趣味の活動も頑張っていますよね。
ニムラ:私は、ブラインドテニスがきっかけで、いろいろなことに挑戦することが出来ています。たとえば、エントリーの為にメールやインターネットを活用し、大会の開催会場までの移動手段や宿泊手段を調べ、円滑な人間関係やSNS利用などについて考え、各種情報収集を積極的にすることが出来るようになりました。
自分の子育てを振り返っても、子どものやりたい気持ちを大切に、その好奇心から、いろいろなことに関わっていくようにしました。これは私自身の子どもの頃に感じていた、両親との距離感も影響していると思います。
チューモくん:子育ての話が出たところで、最後に、今、見えにくい・見えないお子さんを育てている保護者の方に伝えたいことを教えてください。
ニムラ:私は、一人で男子3人の子育てをしました。だからこそ、子どもたち自身が、家事や公共交通機関の利用など、他の子どもよりも、比較的早めに出来るようになったと感じています。
自分が出来る範囲で工夫した生活を送ることで、子どもたちと一緒にいろいろなことを体験しました。すると、自然と子どもたちが自立した生活が送れるようなスキルが身に付くようなりました。私自身も、子どもたちが成人した今でも、試行錯誤しながら、いろいろなことが出来ています。
私は、自分の子どものことを学校だけに任せてはだめだと思って子育てをしてきました。皆さんのご家庭でも、経験の場をたくさん作ってほしいです。
外出、買い物、公共交通機関の利用など、うちの子には早い、うちの子は出来ないと、決めつけていませんか? 一人でいろいろなことが出来る、協力をお願いすることが出来る、ということは、就職する前には身に付けないといけない課題です。今からでも、何か一緒に始めてみませんか?
チューモくん:いろいろなお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
(2025年10月8日 再掲載)