卒業生インタビュー2(6回目)
(2022年 初掲載)
秋田県立視覚支援学校オリジナルキャラクターのチューモくんです。「チューモくん日記」では、本校やその周辺のことについて語っていきます。
令和4年度のサマースクールの保護者学習会に向けて行った、平成14年度に本校高等部普通科を卒業した佐藤聖さんへのインタビューの6回中の6回目です。
チューモくん:前回は、盲学校在籍中にやっておいてよかったことについて聞きましたが、逆に、こんなことをやってもらえたらよかったと思うことはありますか。
佐藤:見えない人が社会に出て行く上であったらよかったなと思うのは、表情について学ぶことです。見えないと、他人を見て真似をして笑顔を作るとかできないからです。今は、自然に笑顔を作ることができるのですが、最初は難しかったです。
それから、「話している人の方を向いて聞く」というのもよく言われました。自分ではできていたと思うのですが、よく注意されていました。
普段、コミュニケーションを取るときに、一般的な人の仕草などを細かく教わるような時間があったらよかったなと思います。
チューモくん:そう思うきっかけは何かありましたか。
佐藤:「いつも真面目な顔をしている」とか「仕草が硬い」と言われたことがありました。
私たちは、体でふれた感覚で情報を得て動くのだけれど、見える人は目から入った情報で滑らかな動きをするようなので、話には聞いてもそれを実感はできませんでした。港囃子をやっていたときも、丸みを帯びた動きというのがよく分からず、「動きが硬い」とよく言われました。
そういうことで、こっちはジョークとして受け止めているのに、真面目に受け止めていると思われる、感覚のずれを感じたりしました。
チューモくん:社会の中では、そういう指摘は多いですか。
佐藤:私は運がよかったのか、そういう話を、こちらが落ち込まないような形で話す友達が結構いたので助かりました。マッサージルームに入るときは、マッサージの練習ではなく、表情の練習をしてから入りました(笑)
今の会社に入るときの面接で、採用の決定打が、「表情がよかったからだ」と言ってくれたんですよ。完全に表情を使いこなすことは難しいですが、少しでも、そういう話を聞いてイメージを作ることは大事だと思います。手引きをお願いするときなども、肩肘張るような感じでお願いすると相手も緊張しますしね。
チューモくん:今日は、いろいろなお話を聞かせていただき、どうもありがとうございました。佐藤さんが在学中に関わりのあった先生もまだ何人かいるので、秋田に来ることがあったら、視覚支援学校にも寄っていってください。
一人暮らしも長くなり、職場でのコミュニケーション、充実した余暇、情報収集、移動など、そつなくこなせるようになっている佐藤さん。盲学校時代の歩行や援助依頼の学習が生きていると言ってもらえたことがありがたいです。
一方で、表情の作り方など、視覚を使ったコミュニケーションの取り方を教えてほしかったという声は、この後に続く幼児児童生徒のためにも、しっかり受け止めていかなくてはならないと感じました。
(2025年8月27日 再掲載)