7号(特別支援教育アドバイザーから、一年のまとめ・新年度に向けて、今年度のセンター的機能の取組など)
「配慮の申し出がなくても」
特別支援教育アドバイザー 佐藤 淳
今年度を振り返り真っ先に私の頭に浮かぶのは、ある高校で職員研修を実施できたことです。この高校には難聴の生徒1名が入学したのですが、本人からは特別な配慮について申し出がなく、先生方の「本当に何もしなくていいのだろうか」、「難聴について知っておきたい」という気持ちから私どもに研修を依頼したということでした。このように配慮を申し出ない生徒は少なくないようです。自分には配慮が必要だと分かってはいるものの、“自分だけ特別に配慮をしてもらうのは申し訳ない”、“目立ちたくない”、“他の生徒の話のネタにされてしまうかも”などという思いや不安があるようです。早い子は小学校高学年からこのような悩みが始まるようです。校内で自分だけが難聴という〈マイノリティー(少数者)〉であることや、自分の力でやってみたい、他者の目が気に掛かるなどの思春期の特徴が背景にあるものと思われます。私たち大人は、「自分に必要な配慮を申し出ることができないと将来困るだろう」と心配になります。しかし、これは成長のあかしであり、成長の一過程であるととらえ、その子の成長する力を信じて、見守り関わり続けることが大切なのではないでしょうか。
小・中学校の例を見ますと、本人が本心を話せて、本人の許容範囲内の‘さりげない配慮’を提案し実施する体制を作ってくれる先生がいると、悩みは軽減されます。
前述の高校では研修後に次のような感想が出され、たいへんにうれしく思った次第です。『生徒から申し出がないから何もしないのではなく、本当は困っているのだととらえ、例えば‘板書しながら話さない’など、自分にできる配慮を行っていきたい』。このような先生方がさらに増えることを願っています。
一年のまとめ・新年度に向けて
年度末になり、引継ぎ資料について準備している時期かと思います。今年度の取組について、本人
や保護者、関係職員と確認の上、4月から順調なスタートが切れるようにしましょう。
関係職員 ⇔ 担任 ⇔ 本人 ⇔ 保護者
◆難聴学級、交流学級で学習する教科の選定
◇自立活動の時間設定
◆補聴器等の自己管理(学校、家庭)
◇座席、席替え
◆交流学級での聞こえ(先生の話、友だちの発表)
◇校内放送や CD、DVD 教材使用時の聞こえと理解
◆難聴理解学習の計画
◇補聴援助システム(ロジャー等)の使用、やり取りの工夫
【引き継ぎ資料】〈例〉
□個別の教育支援計画
□個別の指導計画 (→手立ての記入)
□使用した教材/教具
□授業や生活の様子が分かるもの
□補聴器等のデータ
□各種検査結果(聴力測定、言語検査など)
□面談の記録
□医療機関とのやり取りに関わる記録
今年度のセンター的機能の取組について
本校は、全県の難聴の子供たちとその在籍校を対象に、ニーズに応じた支援を行っております。例年多くの学校で実施している難聴理解研修(職員対象)ですが、今年度は難聴児童生徒の新入学に伴って計画してくださった学校が多数ありました(小1/中5/高1/特支1校)。事後の感想からは「みんなで理解することで支援の幅も広がると感じました」「(難聴児童が)うなずきながら聞いていたので分かっているのだと思っていた」等、子供の顔を思い浮かべ、気づきを得ながら研修していただけたということが伝わりました。
また、毎年本校で開催している難聴児童交流会をはじめ、県北地域や一側性難聴児対象の交流会も実施し、多数のご家族、担任の先生にご参加いただきました。今後も難聴の子供たちの出会いと仲間づくり、情報交換の場を提供していけるように取り組んで参ります。 (令和7年2月現在 実施・利用数)
理解学習 | 17校 |
職員研修 | 20校 |
難聴児童交流会 | 15人(児童) |
サテライト教室(北/南) | 9人/5人 |
本校での教育相談など | 28人 |
センター的機能の紹介~難聴理解学習(児童生徒向け)~
聞こえない、聞こえにくい児童生徒が通常の学級(交流学級)で生活する場合、その学級の子供たちの理解がとても大切です。きこえとことば支援センターでは在籍校の先生と相談の上、学年や発達段階、難聴児の聞こえ、学習のねらいに合わせて難聴理解学習を行っています(実施にあたっては難聴児本人および保護者の同意が必要です)。
【内容例】
・補聴器や人工内耳について知ろう
・聞こえない、聞こえにくい体験をしよう
・みんなに分かりやすい話し方、聞き方
~児童生徒の感想から~
~児童生徒の感想から~
遠くから話して聞こえなかったら「なんで無視するの」って怒らないで、肩をたたくのをがんばります。 (秋田市/小1)
(声が)小さすぎても聞こえないけど大きすぎても耳に負担をかけてしまうと知ったので、話をするときは声の大きさやタイミングを考えて話そうと思いました。(由利本荘市/小6)
令和7年度のセンター的機能申し込みについては3月初旬、学校宛てにご案内(メール)します
サテライト教室、教育相談(定期)について継続利用をご希望される場合は、保護者と相談の上、申込書の早めの提出をお願いします。
施設の予約等の都合上、4月11日(金)を申し込み締切とさせていただきます。
初めて利用を検討される方は、電話等でご相談していただいてからでも構いません。「詳細につ
いて聞きたい」、その他ご不明な点がありましたら、下記までご連絡をお願いします。
きこえとことば支援センター(秋田県立聴覚支援学校内)
【直通携帯電話】090-8784-6302
【聴覚支援学校】〒010-1409 秋田市南ケ丘一丁目1番1号
TEL:018-889-8572
FAX:018-889-8575