令和7年度 研究概要
1 研究主題
児童生徒の資質・能力の育成を目指す学習評価の在り方
~教師による学びの姿の見取りを基点とした授業改善を通して~ (1年次/2か年)
2 研究主題の設定理由
(1) 本校の目指す学校像
本校は、県内唯一の肢体不自由及び病弱者である児童生徒を対象とした特別支援学校であり、児童生徒の教育的ニーズに応じ、教育課程の異なる3つの類型と訪問教育を実施している。学校経営の方針の中で、教育目標「肢体不自由及び病弱者である児童生徒の多様な教育的ニーズに応じて、医療療育機関と連携した安全な教育環境のもとで、自立と社会参加に必要な力を育成する」が示された。教育目標の実現に向け、教育方針にある児童生徒の主体性や自主性を育むために確かな教育を展開する中で、児童生徒の心身の健康状態を的確に把握し、個々に応じた効果的で丁寧な指導を行うことが求められる。
本年度の重点では、チームによる学習評価の充実を図り児童生徒主体の授業づくりに取り組むこと、ICTを積極的に活用し校内で情報共有するとともに、肢体不自由及び病弱教育について研修を重ねながら専門性の高い授業実践をすることが位置付けられた。
(2) これまでの研究から
本校の目指す学校像を具現化するために、令和5・6年度は、研究主題「肢体不自由及び病弱教育の主体的・対話的で深い学びの授業づくり」のもと、児童生徒の育成を目指す資質・能力を育むことを目的に「単元題材構想シート」を柱とした授業づくり支援ツールを用い、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善にチームで取り組んだ。複数の教師による多面的・多角的な視点での単元構想、学習者と授業者双方の視点に立ったPDCAサイクルでの授業実践等において成果が見られた。
一方、各教科の資質・能力の育成に向けた評価規準の設定や評価方法等の学習評価の在り方、教師による児童生徒の学びの見取り方等が課題として提案された。
(3) 社会的要請と本校の実情
学習指導要領では、「何ができるようになるか」という育成を目指す資質・能力について、各教科等の目標及び内容を「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の3つの柱で整理した。「どのように学ぶか」という「主体的・対話的で深い学び」の視点に立った授業を展開する中で、「何が身に付いたか」という評価の視点を重視し、教師が授業を振り返って評価し、学習や指導の改善に生かしていくサイクルが大切である。また、観点別学習状況の評価の実施に際して、学習指導要領の規定に沿った評価規準の作成、各教科等の特質を踏まえた適切な評価方法等の工夫、評価の結果を児童生徒の学習や教師による指導の改善につなげていくことが重要である。
肢体不自由及び病弱者に加え、発達障害や知的障害を併せ有する重度重複の児童生徒が多く在籍している本校の現状を鑑みると、一人一人の教育的ニーズに応えるためには、実態把握を基に育成したい資質・能力を明確にした授業を展開する中で、教師が児童生徒の学びを丁寧に見取り、授業改善につなげていくことが大切である。特に本校に在籍している児童生徒の半数以上が自立活動を主とする児童生徒であることから、表出や反応の微細な児童生徒の見取りは専門性を高める上でも重要である。日々の授業を通して教師の見取りに関する力を高めるとともに、ICT等を活用しながら児童生徒の学びを見取るための視点の整理や方法等を蓄積し、教師による見取りを基点とした授業改善に組織的かつ計画的に取り組む必要がある。
そこで、本校の目指す学校像、これまでの研究の取組、社会的要請と本校の実情を踏まえ、研究主題「児童生徒の資質・能力の育成を目指す学習評価の在り方~教師による学びの姿の見取りを基点とした授業改善を通して~」を設定した。
3 研究の目的
児童生徒の資質・能力の育成を目指すために、評価手段として見取りに焦点を当てて研究を推進する。複数の教師で児童生徒の学びの姿を見取り、見取ったことを基に授業改善を行う。併せて、児童生徒の学びの姿を見取るための手立て等の検証を行う。
<見取りの定義>
本研究における見取りとは、教師が子どもの行動・表情・反応・言葉等に表れた事実に注目し、その子どもの内面や思考の過程を推測して理解(解釈)しようとする営みであり、次の指導へのフィードバックを目的とする。
4 研究仮説
次のことに取り組むことで、児童生徒の資質・能力の育成につながるだろう。
- 日々の授業や研修会等を通して、児童生徒の学びを見取る教師の力の向上を図る。
- 見取りの視点を整え、複数の教師で見取ったことを共有し、次の指導にフィードバックする。
- 見取りに関する取組の蓄積や様々な記録方法について整理する。
5 研究組織
教育課程検討委員会
研究の成果・課題を教育課程に反映
全校研究
- 全体研究の計画と推進
- 各グループ研究の取りまとめ
学部・分掌との連携
- 類型チーフ会(教務部)
- 類型ミーティング(各学部)
- 学部会(各学部)
- 研究ラボ(情報教育部 他)
グループ研究
- グループ研究の計画と推進
- 授業研究会の計画と実施
- ミニ研修会の計画と実施
- 授業を見合う会の計画と実施
- グループ研究の情報発信
授業力向上に向けた取組
- 職員研修会の計画と実施
- 校務支援システム及び研究ラボを活用した情報発信
- 3校授業を語る会の計画と実施
- 他校授業研究会への参加
- 授業づくりサポート体制の整備
<研究グループ>
- 準ずる各教科を学習するグループ:各教科
- 知的代替の各教科を学習するグループ:国語科
- 主として自立活動を学習するグループ:国語科
- 訪問教育の学習グループ:国語科
<授業研究会の持ち方>
各研究グループで拡大授業研究会または授業研究会を実施する。
- 授業研究会:研究グループに所属する職員が参加
- 拡大授業研究会:研究グループに所属する職員に加え、研究授業の対象となる学習グループが所属する学部職員(授業参観と授業研究会のみ)が参加
6 研究の内容と方法
児童生徒の資質・能力の育成に向けて、教師による見取りに焦点を当てて研究を推進する。具体的な方法は次のとおりである。
(1) 教師の見取りに関する理解を深める取組
- 児童生徒の行動や変容からの見取り方
→見取る対象や場面の限定、見取る視点の設定、教師の対話による考えの共有等 - ICT等を活用した見取りと分析
- 見取りに関する研修会の実施
(2) 見取りに基づく授業改善に向けた取組
- 児童生徒の育成したい資質・能力の具体化
- 日々の授業改善と学部との連携
- 次の指導へフィードバックするための授業研究会の工夫
(3) 見取りに関する様々な取組の検証
- 実践を通した検証と成果の整理
- 記録ツールの収集と活用方法の検証
7 研究計画
【1年次】(令和7年度)
日々の授業や研修会等を通して、教師の見取りに関する理解を深め、見取ったことを授業改善につ
なげる。見取りに関する取組や記録ツール等の収集と整理を行う。
Ⅰ期:グループ研究や職員研修会等の機会を活用して、見取りについて学ぶ。
Ⅱ期:日々の授業や授業研究会を通して教師の見取る力の向上を図るとともに、見取りに関する方
法や記録ツール等を整理する。
【2年次】(令和8年度)
- 1年次の研究成果を基に、教師の見取りに関する理解を深めながら、児童生徒が身に付けた力を日常生活の中で発揮する姿を目指した授業づくりを行う。
- 教育課程や実態の異なる児童生徒の評価方法や記録ツール等の蓄積と整理を行う。
8 年間計画
実施日 | 項目 | 主な内容 |
---|---|---|
4月25日(金曜日) | 全校研究会1 | 今年度の全校研究について、教育専門監による研修会 |
5月23日(金曜日) | グループ研究1 | 今年度のグループ研究について |
6月17日(火曜日) | 職員研修会1 | 富山大附属のDVD視聴 「学びあいの場 教師の子どもの見方を豊かにする学びあい」 |
6月16日(月曜日)~6月27日(金曜日) | 授業を見合う会 | 1類型の教科指導を自由参観 |
8月4日(月曜日) | 職員研修会2 | 外部講師によるオンライン研修会 講師:金沢星稜大学 講師 柳川久美子氏 「教師の学び合いを通じた子どもの内面の見取り」 |
8月22日(金曜日) | 職員研修会3 | 演習:見取りのワークショップ(2部制) |
9月9日(火曜日) | グループ研究2 | 指導案検討 |
9月から11月 | 授業を見合う会 | 実施時期は各研究グループで設定(直接参観・動画視聴可) |
9月17日(水曜日) | 研究授業(知的代替) | 小学部高学年2グループ 国語科(授業提示) |
9月18日(木曜日) | 授業研究会(知的代替) | 小学部高学年2グループ 国語科(拡大授業研究会) 指導助言:教育専門監 佐藤 操氏 |
10月中旬(予定) | 授業研究会(準ずる教育) | 学部・学習グループ・各教科 ※調整中 指導助言:教育専門監 藤原恵理子氏 |
10月20日(月曜日) | グループ研究3 | 改善授業の結果報告 |
11月18日(火曜日) | グループ研究4 | 見取りに関する取組の整理等 |
11月20日(木曜日) | 授業研究会(自立中心・訪問) | 中学部2組Aグループ 国語科(授業提示・拡大授業研究会) 指導助言:秋田大学大学院 教授 藤井慶博氏 |
12月15日(月曜日) | グループ研究5 | 見取りに関する取組の整理等 |
1月22日(木曜日) | グループ研究6 | 今年度のグループ研究のまとめ |
3月13日(金曜日) | 全校研究会2 | 今年度の成果と課題、次年度の研究について |